瞑想中に、脳がしびれたり、ピリピリ、ムズムズするような不思議な感覚を覚えたことはありませんか?
実は、これらの感覚は瞑想の効果が表れている証拠なのです。脳に起こる変化のサインと言えるでしょう。
しかし、「瞑想をしているはずなのに、脳がしびれるのは何か変だ」と不安になる方も少なくないようです。
そこで本記事では、瞑想中の脳のしびれについて、その原因と効果を科学的な観点から解説していきます。
正しい理解を深めることで、安心して瞑想を継続できるはずです。
- 瞑想中の脳のしびれは異常ではなく効果の表れ
- 脳のしびれは集中力アップやリラックス効果のサイン
- 瞑想を続けることで脳の構造と機能が良い方向に変化
- 効果を実感するには正しい方法で根気強く続ける必要がある
瞑想中に脳がしびれる感覚は安心の証!
瞑想中の「ピリピリ」「ムズムズ」は脳の変化のサイン
瞑想をしていると、脳や頭皮に「ピリピリ」「ムズムズ」としたしびれを感じることがあります。これは決して異常ではありません。 むしろ、瞑想の効果が現れている証拠なのです。
瞑想中のしびれ感は、脳内の血流量が増加し、ニューロンの活動が活発になっていることを示しています。脳が変化のプロセスにあるサインなのです。特に前頭葉や頭頂葉など、集中力や思考に関わる脳の領域で、このような感覚が起こりやすいとされています。
ですから、瞑想中にしびれを感じたら、「脳が目覚めている!」と前向きに受け止めましょう。 それは、あなたの瞑想が着実に効果を上げている証なのです。
瞑想が成功すると、気持ちいいしびれを感じる
多くの瞑想実践者が、深い瞑想状態に入ると、心地よいしびれや振動を感じると報告しています。これは、瞑想が成功している証拠と言えるでしょう。
瞑想が深まると、体は完全にリラックスした状態になります。このとき、交感神経の働きが抑えられ、副交感神経が優位に立ちます。すると、体の緊張がほぐれ、血行が良くなります。 その結果、頭皮や脳に心地よいしびれが生じるのです。
また、深い瞑想状態では、脳波がシータ波(4〜8Hz)やデルタ波(0.5〜3Hz)に変化します。これらの脳波は、深いリラクゼーションや睡眠時に現れる波。つまり、気持ちのいいしびれは、脳が深いリラックス状態にあることを物語っているのです。
瞑想によって前頭葉がしびれるのは集中力アップの兆し
瞑想中、前頭葉にしびれや圧迫感を覚えることがあります。これは瞑想による集中力の向上を示す現象だと考えられています。
前頭葉は、思考や意思決定、集中力をつかさどる脳の司令塔。瞑想を続けると、この前頭葉の血流量や活動が高まります。 その結果、日常生活では感じにくいしびれや圧迫感が生じるのです。
特に、止瞑想(サマタ瞑想)では、一点に意識を集中させるトレーニングを行います。すると、前頭葉の前頭前野が活性化。集中力が高まるとともに、不要な雑念が減少していきます。
ですから、前頭葉のしびれは、あなたの集中力が着実に向上している証拠ととらえることができるでしょう。地道な瞑想の成果が、目に見える形で表れているのです。
「ふわふわ」とした心地よい感覚は瞑想の効果
瞑想を続けていると、体が「ふわふわ」と軽くなったような心地よい感覚を覚えることがあります。これも、瞑想によるリラクゼーション効果の表れです。
瞑想によって心と体の緊張がほぐれていくと、体が本来持っている感覚が研ぎ澄まされていきます。 すると、普段は感じにくい微細な感覚を捉えられるようになるのです。
例えば、呼吸に意識を集中させる瞑想では、吸う息と吐く息に細やかな意識を向けます。そうすることで、空気が体内を巡る感覚を鮮明に感じ取れるようになります。
さらに、瞑想によって自律神経のバランスが整うと、筋肉の緊張が和らぎ、体が軽やかになります。血流も改善されるため、隅々にまで酸素や栄養が行き渡るようになるのです。
こうした変化の結果として、「ふわふわ」とした心地よい感覚が生まれるのだと考えられています。日頃の疲れが洗い流されていく心地よさを、存分に味わってみてください。
瞑想を続けると、脳の形が変わる!?
瞑想を習慣的に行うことで、脳の構造そのものが変化することが科学的に明らかになっています。これは、瞑想が脳の可塑性を高めるためだと考えられています。
ハーバード大学の研究では、瞑想歴が平均9年のヨガ瞑想の熟練者を対象に、MRIを用いて脳の構造を調べました。すると、瞑想をしない一般の人々と比べて、熟練者の脳には次のような違いが見られたのです。
- 前頭前野、頭頂葉、海馬の灰白質が増加
- 扁桃体の灰白質が減少
つまり、瞑想を重ねることで、記憶力や共感力、ストレス耐性に関わる脳領域が発達し、不安や恐怖に関わる扁桃体が縮小したのです。これは、瞑想によって脳の構造から変えられることを示す重要な発見だと言えるでしょう。
また別の研究では、わずか8週間の瞑想プログラムで、集中力に関わる前頭前野の灰白質が増加することが報告されています。
こうした結果から、瞑想を日常に取り入れるだけで、誰しもが脳を良い方向に変えられる可能性があるのです。ぜひ、脳の変化を感じながら、瞑想を継続してみてください。
瞑想は脳の健康維持にも効果的
瞑想は脳の萎縮を防ぐ
加齢とともに気になるのが、認知機能の低下です。なかでも、加齢による脳の萎縮は記憶力低下の主な原因と考えられています。
しかし、瞑想にはこの脳の萎縮を食い止める効果があることが分かっています。アメリカのUCLAが50代から70代の被験者を対象に行った研究では、瞑想歴が長い人ほど、脳の灰白質密度の低下が少ないことが明らかになりました。
萎縮が抑えられていたのは、以下のような記憶や学習に関わる脳の領域です。
- 海馬
- 楔前部
- 左尾状核
研究チームは、瞑想の持続的な実践が、これらの領域の神経細胞の発火を活性化させ、萎縮を防いでいる可能性が高いと考察しています。つまり、瞑想には加齢に負けない脳を維持する働きがあるということですね。
高齢期の健やかな生活には、脳の健康維持が欠かせません。今から瞑想を生活に取り入れて、将来に備えてみるのもよいかもしれません。
瞑想で脳が大きくなる!?
瞑想を積み重ねていくと、脳が大きくなる可能性があります。これは、瞑想が脳の神経ネットワークを広げるためだと考えられています。
オランダのライデン大学が行った研究では、瞑想の熟練者と初心者の脳を比較。すると、熟練者の脳では、神経繊維である白質が増加していたことが判明しました。白質が多いほど、脳内の情報伝達がスムーズになります。
特に、白質の増加が見られたのは以下の脳領域でした。
- 前部帯状皮質…注意力や自己制御に関わる
- 右島皮質…自己認識や共感性に関わる
- 脳梁…脳の左右をつなぐ連絡路
これらの領域が発達することで、集中力や感情コントロール、自己理解、人との共感的なコミュニケーション能力が高まると考えられています。
また、瞑想によって脳が大きくなることは、アメリカのエール大学の研究でも確認されています。瞑想の種類は「呼吸へ注意を集中させる瞑想」(ビパッサナー瞑想など)です。被験者は瞑想の経験がない初心者でした。
研究チームが、8週間の瞑想プログラムの前後で脳を計測し比較したところ、アミグダラの体積が減少する一方で、前頭前野の体積が増加していたのです。つまり、たった8週間の瞑想で、脳に顕著な変化が生じたというわけですね。
アミグダラは脳の中の扁桃体とも呼ばれ、恐怖や不安などのネガティブな感情の制御に関わっています。この部位が小さくなるということは、ネガティブな感情に振り回されにくくなるということ。一方、前頭前野は理性や論理的思考を担う脳の司令塔です。ここが発達することで、自己をコントロールする力が養われるのです。
以上のような研究結果から、瞑想によって脳の危険信号に敏感に反応する領域が鎮静化され、思慮深く行動する領域が強化されることが分かります。つまり、トレーニングを重ねることで、脳の偏りを整え、バランスのとれた脳に近づけていけるのです。
瞑想は集中力を高める前頭前野を鍛える
現代社会で求められる能力の1つが、集中力です。瞑想はその集中力を高める効果が期待できます。
集中力は、脳の前頭前野によってコントロールされています。前頭前野は、ワーキングメモリ(一時的な記憶)を司る場所。複雑な情報を瞬時に処理したり、雑念をシャットアウトしたりする働きを担っています。
集中力が高い人ほど、前頭前野が発達しているという研究結果もあります。つまり、前頭前野が鍛えられれば、集中力も自然と高まるというわけです。
そして、瞑想にはこの前頭前野を鍛える効果があることが分かっています。スペインのバルセロナ大学の研究では、8週間のマインドフルネス瞑想プログラムを受けたグループを調査。すると、瞑想をしなかったグループに比べて、前頭前野の灰白質濃度が増加していたのです。
また中国の潘陽医科大学の研究では、瞑想歴10年以上のチベット仏教の僧侶の脳を調べました。すると一般の人に比べて、前頭前野の灰白質量が多かったことが判明。長年の瞑想実践が、前頭前野を発達させたのだと考えられています。
こうした事実から、集中力を高めたいなら、瞑想を習慣化するのが有効だと言えそうです。ビジネスシーンで結果を出したい人や、受験勉強に取り組む学生にもおすすめですね。瞑想のトレーニング次第で、頭の回転が速くなり、アイデアも豊かになっていくかもしれません。
脳梗塞の前兆? 唇のしびれに要注意
瞑想中に唇がしびれる感覚は、深いリラクゼーション状態の表れかもしれません。でも、時と場合によっては、脳梗塞の前兆の可能性もあります。脳梗塞は命に関わる重大な病気です。唇のしびれが続くようなら、早めに専門医に相談しましょう。
唇は顔面神経によって支配されています。脳梗塞が起こると、この神経の働きが損なわれ、唇のまひやしびれが起こることがあるのです。特に要注意なのは、次のような症状です。
- 片側の唇のみにしびれがある
- しびれが長時間続く(24時間以上)
- 他の麻痺症状を伴う(手足のまひなど)
これらの症状が見られる場合は、すぐに病院で検査を受けるようにしましょう。危険を感じたらためらわずに救急車を呼ぶことも大切です。
ただ、瞑想中に一時的に感じる心地よいしびれは、脳梗塞の心配はないでしょう。血流がよくなって神経が興奮している状態だと考えられます。
いずれにしても、普段から自分の体の声に耳を澄まし、変化を見逃さないよう心がけることが何より大切だと言えます。
Q&Aよくある質問
- Q. 脳がしびれる感じはどんな病気ですか?
A. 瞑想中に感じる脳のしびれは、ほとんどの場合、病気が原因ではありません。むしろ、リラクゼーションや集中力アップの表れだと考えられています。脳に血流が増え、神経細胞が活性化することで、しびれやふわふわとした感覚が生まれるのです。ただし、強い痛みを伴うしびれや、長時間続くしびれは、脳の病気の可能性もゼロではありません。不安があるときは、専門医に相談するのが賢明でしょう。 - Q. 瞑想をすると脳はどのように変わるのか?
A. 瞑想を習慣的に行うことで、脳の構造や機能に以下のような変化が起こることが科学的に明らかになっています。
- 脳の灰白質が増加
瞑想歴が長いほど、前頭前野、頭頂葉、海馬などの灰白質密度が高くなる傾向にあります。灰白質は神経細胞の細胞体が集まった部分。ここが増えることで、脳の情報処理能力が向上すると考えられています。 - ストレス耐性が上がる
瞑想を重ねると、扁桃体(アミグダラ)の活動が鎮静化されることが分かっています。扁桃体は脳のなかでも最もストレスを感じやすい部位の1つ。ここが落ち着くことで、ストレス耐性が上がるのです。 - 集中力と作業記憶が高まる
瞑想は前頭前野を鍛える最も効果的なトレーニングの1つです。特に、注意集中型の瞑想を積み重ねると、前頭前野の活動が活発になります。すると、集中力や一時的な記憶力(作業記憶)が向上するのです。 - 共感力や自己洞察力が養われる
瞑想は、左右の脳をつなぐ脳梁を太くします。両脳のバランスが整うことで、論理と感性、自己と他者への理解が深まっていくのです。「内なる自分」と向き合う内観の力も高まります。
このように、瞑想によって脳の望ましい変化を促せることは、数多くの研究で実証されてきました。しかも、変化は脳だけにとどまりません。瞑想はこころと体、人生までも好転させる力を秘めているのです。ただし、そのためには、正しい瞑想法を根気強く続ける必要があります。効果を実感できるまでには、少なくとも数ヶ月から数年はかかると考えたほうがよいでしょう。
まとめ
瞑想中に感じる脳のしびれは、体が瞑想に反応している証拠です。血流改善や神経の活性化が起こり、普段は感じない内なる世界に目覚めていく。その過程でこそ、「ピリピリ」「ムズムズ」「ふわふわ」といった不思議な感覚が生まれるのです。
ただし、あくまでもそれは副産物に過ぎません。感覚を追い求めすぎると、かえって瞑想の効果が損なわれてしまう。大切なのは、しびれなどの変化をただ静かに見守ること。「今ここ」の瞬間に意識を向け続けることです。
そうすることで、いつしか脳も心も体も変わっていく。それは、科学的にも実証されている瞑想の効用です。集中力、記憶力、ストレス耐性、共感力……。脳のあらゆる能力を最大限に引き出せる可能性を秘めているのです。
もちろん、変化を実感できるまでには時間がかかります。障害やリスクがないわけでもありません。だからこそ、焦らずにコツコツと積み重ねていくことが何より大切。信頼できる指導者のもと、正しい方法で実践を続けること。
脳は驚くほど可塑性に富んでいます。その脳を望ましい方向に導いてくれるのが瞑想なのです。内なる不思議な感覚に耳を澄まし、脳と対話するように瞑想を続けていく。今日からその一歩を踏み出してみませんか。 瞑想はあなたの人生を変える扉を開いてくれるはずです。
まとめ
- 瞑想中の脳のしびれや違和感は異常ではなく効果の表れである
- ピリピリ、ムズムズとした感覚は脳の変化のサイン
- 瞑想が成功すると気持ちいいしびれを感じることがある
- 前頭葉のしびれは集中力アップの兆しと言える
- ふわふわとした感覚はリラクゼーション効果を示している
- 瞑想を続けると脳の構造が変化し、灰白質が増加する
- 瞑想は脳の萎縮を防ぎ、加齢に負けない脳を維持できる
- 瞑想によって脳が大きくなり、神経ネットワークが広がる
- 瞑想は集中力に関わる前頭前野を鍛える効果がある
- 瞑想中の唇のしびれは要注意だが、一時的なしびれは問題ない
- 瞑想は脳の機能を向上させ、ストレス耐性や共感力も高める
- 瞑想の効果を実感するには根気強く正しい方法で続ける必要がある